A MAGICAL JOURNEY WITH CARLOS CASTANEDA
その話は1956年、『知覚の扉』を読み始める前のことだった。この本は学問性と恐るべき神秘 mysterium tremendum の折衷的混合であった。一度読むなりカルロスは夢中になった。ほとんど未知のドラッグの影響下にありながら、しかしもっとも優れた作家が洗練された学的方法で書きつけたものがあった。ハックスレイは偽グルの狂気じみた幻想家ではない。薬物作用の産物として、特異な世界観を手にした知的な紳士だった。カルロスが成りたかった全てである人物がここにいた。都会的で、文学的、知的で尊敬に値し、創造的かつ優れた作家、まれな資質を持った芸術家である。ハックスレイは伝統的な意味で教養人、知者であることの保証と卓越性を持っていた。ドラッグ使用や変性意識における微妙なほころびの感覚はまったくなかった。ハックスレイは越えていた。彼は大衆から束縛されず汚されないままにとどまっていた。
カルロスの心の中ではハックスレイはアカデミズムの罠を逃れていた。醜悪な悪夢。教授たちが授業をぴょんぴょん飛びはね、学部のバーティではツイードのジャケットにパイプをくゆらせ、なにくわぬ顔で満足し、アカデミックなそして退屈な話をしている。ハックスレイはそれを逃れている。1950年代中頃、彼はドラッグの中に、宗教、迷信、純粋な原始呪術の中に飛び込み、そして勝利者として現れた。彼は中傷者たちを確信させた。しかし事実はその実験ならびに説得力ある議論はキャンパスで雇われた専門家を越えた長年光り輝いた。
彼はまるで二人の違った人間のようだった。あるレベルではグレイのスーツに身をつつみ、学問的作業を楽しみ、型にはまった授業で教え、最初は練習問題からというふうにしゃべる。別のレベルでは高められた意識のマスターとしてのハックスレイがいる。
恐ろしく平凡な学校的因習を彼に見つけるのは普通のことだ。たくさんの職業科専攻学生、生物学の学生がいる。卒業プログラムに熱中する親たち。そして祭壇には司祭よろしく騎手の鞭を合図に学生を眺めやる...。ハックスレイ、彼はそういう者たちの一員ではなかった。カルロスは彼に二つの世界で生きる者、つまり彼が成りたかった者を見ていた。
カルロスはハックスレイが理解したと見てとった。ハックスレイは古いクランデロス curanderos をとスー・チャイルドレスの創造を理解していただろう。骨の随まで彼は限界がないことを、偶然や偶然の一致などないことを知っていた。あるのはただ抑制されない主観、恐るべき神秘 mysterium tremendumだけだった。
【註】 curanderos は不明。
スー・チャイルドレスはカスタネダが勝手に作った架空の女性像。しかしマーガレットは電話帳で調べて実在していたことを知る。カルロスが描いたスケッチと極めて似ているのでマーガレットは興奮する。マーガレットは彼女と友達になり、いろいろカルロスとの関係を問い質すが、彼女はカルロスのことを知らない。しかしある学校の創作教室に彼らは所属していたことを突き止める。真相は闇の中だが、この一件でマーガレットは自分のことを神秘的に見せたいカルロスの面を強調している。