時の終わり−日常生活の深い関わり



 ドン ファンに会いにソノラに行った。彼は私が会いに言ったときから私には無限が働いていると思っていた。それはまた彼と彼の系統の呪術師たちが体験した時の終わり end of an era でもあった。「おまえはたんに時間を使い果たしたってことだ。」

 彼はそれから私に起こったことを話し尽くすよう求めた。形式的なおしゃべり formal talksとは、弟子たちに教えられたことを、ときにおうじてまとめた概括のようなものである。形式的でないおしゃべりとは、ものごとの日々の解明である。こうやって自分を空っぽにするのが呪術のやり方で、それは自分の要塞を捨て去る abandon することにつながる。

 私は自分の話を語り始めた。好きだった叔父の話を想い出した。私はクリスマスや誕生日に何か贈り物を受け取ったことがない。それに気づいたとき、叔父は愕然となった。叔父は私の父に話したのだろう。というのは私は贈り物をもらったからである。その後数年して、私は成人するわけだが、それでも深刻に内省することはできなかった。数年して、ある日珍しいことに、私は情動的な高まりの中で呻吟していた。動揺は大きくなり、その圧力で私は自分が劇的な変化を必要としている人生の一時期に到達したのだ、と信じた。人生の再構成 rearrangement を要求する何かが自分の中にあった。

 それから人類学を勉強することになった。心に浮かんだ最初のことは学校を変えて、ロサンジェルスから離れたどこかよそに行くことであった。別の町で夏期いっぱい授業を受ける登録をした。学校へ登録を済ますと同時に、友人の兄である心理学者の調査アシスタントとして働くことにした。若い男女が抱える問題についての質問−応答をテープにした退屈なものから抜き出したものをもとにして分析をきっちりすることを要求した。学校での過剰な作業、満たされない期待、家庭での無理解、挫折する恋愛などなどであった。

 私はテープを聞くことに没頭するようになった。最初どのテープにもまるで自分がしゃべっているかのような感覚があって、とても引き込まれてしまった。数週間たち、さらにテープを聞いていると、魅力は恐怖に変わった。問いを含むどの一文も私のものだった。彼らはまるで私の深いところから語っているようだった。誕生のときから自分の中に植え込まれた私の個体感覚は、この巨大な発見の衝撃のもとで、あてもなく崩れ落ちてしまった。

 そしてある日、ひどいことが起こった。その心理学者が夜中の3時に訪ねてきて、とんでもないことがあったんだよ、君という調子で話し始めた。それは彼の助手のテレサ・マニングとの一夜についてであった。医者はこの女性を誘った。やってきたテレサはいきなり彼に飛びかかると、彼のあそこを手慣れた調子でひっぱりだした。不快になった医者は立たなくなってしまったのだが、それをまた見下したようにこのテレサが彼の腹を蹴飛ばし、「役立たずのホモ impotent faggot」と言ってしまった。そんなこんなでこの医者は怒りに駆られて一晩中私に愚痴をこぼしていた。

 私は翌日今度は人類学の教授に面食らってしまった。彼はボリビアとペルーの高原に住むアイマラというインディアンについて話をし、発酵したとうもろこしから酒を作るときに、チャヒチャを女たちが噛んで、唾液とまぜて作ることを紹介した。しかしついでに、この教授は自分がそのチャヒチャ噛みのインディアンの女性を供され、その女達はチャヒチャを噛むことでのどのあたりの筋肉が発達し、とても具合がいいのだ、などと卑猥な冗談を言ってしまう。若い女性たちが前列に座っていた教室はあっけにとられ、教授はしばしの沈黙の後、自分の冗談にヒステリカルに笑い、あたりはざわつきだした。

 私は精神科医のところで聞いたテープの山に締め付けられ、その医者の話、人類学の教授の話に締め付けられ、その学校を止め、仕事もやめ、ロサンジェルスに帰ってしまった。

 「あの精神科医や人類学の教授によってぼくの身に起こったことがなんであれ、ぼくは理解できない感情的な状態になってしまったんだ。それをただ内省introspectionと言うことができるかもね。絶え間なく僕は自分とおしゃべりをしてきたんだ。」  「おまえの病気はかなり単純だ」首を振りながらドン ファンが言った。明らかに私の状況が彼にとっては楽しかったのだろう。私はその楽しさを共有できなかった。というのはなんのユーモアもなかったからだ。  「おまえの世界は終わりに近づいている」彼は言った。「おまえにとっては時の終わり the end of an era だ。生涯をかけて知ってきた世界が別れを告げているんだ、これを考えたことがあるか?平和に混乱も騒ぎもなくそんなことがあると思っているのか?違うな。おまえの下で身をよじり、その尾でひっぱたいているのさ。」

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